時速194キロで事故を起こしても危険運転致死罪は成立しない!!と弁護団が主張するのは理由とは
動画引用元:https://youtu.be/K7aP5XPBSH4?si=HemaStIQ_OHg-fCk
2021年2月、大分市大在の県道で当時19歳の男が運転する時速194キロの車と衝突して亡くなった事件の裁判の初公判が行われ、危険運転致死罪の起訴内容を一部否認したという報道が発表されました。
公道で時速194キロも出して車を運転して事故を起こし、相手が亡くなったというのなら殺人罪ではないか!!などという意見がSNS上では多く散見される今回の裁判の問題点。
弁護側は危険運転は成立しないと主張しているところ、一般的な感覚からはなぜだ!!どうしてだ!?という疑問の声が上がってくると思います。そのどうして危険運転の不成立が主張されるのか、主張の根拠を調査します。
もくじ
時速194キロでの交通事故、検察側と弁護側で主張が対立!!
公道を時速194キロという猛スピードで走行する危険性は通常の感覚を持っている人であれば容易に理解できる内容だと思います。初公判で死亡事故を起こした被告の男について危険運転致死罪は成立しないと弁護側が主張しているという部分だけ見聞すると、はぁ!?なぜ!?と疑問が湧いてくるのが自然なのかもしれません。
時速194キロでの事故は過失運転なのか危険運転致死なのか
この点、検察側は当初事故を起こした男について危険運転致死の法定刑が最長で20年の懲役となるのに対し、より軽い懲役7年以下となる過失運転致死で在宅起訴をしていたという経緯があります。ここでも、194キロという猛スピードで事故を起こしておいて過失!?という疑問が湧いてくると思います。
ご遺族の願いもあり過失運転致死罪から危険運転致死罪での起訴へ変更
動画引用元:https://youtu.be/e7jOB0kDo8k?si=kIddCGbCVF1mELQX
一般的な常識的な感覚では過失運転では納得も理解も得られないような内容なのに、法律の専門家である検察と弁護士で主張が対立しているということと、元々検察も過失運転致死で起訴していたというのは、この危険運転致死罪の成立の要件が厳しいということが関係しています。
危険運転致死罪の成立について弁護士と検察の主張対立の背景を専門家が解説
画像引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/7e6f1d2dfe4c5ef4c70f5cfaf6b477681d732c73?page=2
東京都立大学の星周一郎教授の解説によると危険運転致死傷罪の規定では成立の要件として、「その進行を制御することが困難な高速度」が必要になります。
危険運転致死罪が成立しないとする弁護側の根拠
これまで従来の判例では、「自動車自体が物理的に制御できないこと」を意味し、「他の自動車・歩行者との関係など、交通状況に応じた制御が困難という意味ではない」とする立法趣旨に基づいた解釈を 弁護側は採用しているという解説ですね。
検察側の危険運転致死罪が成立するとする根拠
検察側は「194キロでの走行は車体が大きく揺れ、少しのミスで操作を誤ることがある」とする主張を根拠としています。こちらも従来の判例にある解釈の枠組みの中で、危険運転致死傷罪の成立が認められるとする主張です。
危険運転致死罪の成立範囲にかんする問題点
そもそもどうして今回のような検察と弁護士の主張の対立が発生するのかについて東京都立大学の星周一郎教授によると問題の根源は、現行の危険運転致死傷罪のそもそもの成立範囲が、社会一般の常識的判断に比べて狭すぎることにあ本件の裁るという点を指摘されています。そして、今後の課題として裁判の帰趨とは別に、現在の危険運転致死傷罪をはじめとする自動車運転処罰法の枠組みの是非の問題も、あわせて考える必要があるというように指摘されています。
時速194キロで事故を起こしても危険運転致死罪は成立しない!!と弁護団が主張するのは理由まとめ。
・検察側は元々危険運転致死よりも軽い過失運転致死での起訴の方針であった。
・ご遺族の願いと多くの署名により、途中で危険運転致死に訴因を変更している。
・弁護側と検察側の主張の対立はそれぞれこれまでの裁判例の中で積み上げられてきた理論を根拠としているが、被告の弁護側は起訴内容が成立しない理論を採用し、検察側は成立する根拠を採用している。
・そもそも今回の裁判以前に危険運転致死傷罪の成立範囲が一般的な感覚とくらべて狭すぎるという問題があることを東京都立大学の星周一郎教授が指摘されている点が参考になる。
今後の裁判の経過を関心深く見ていきたいと思いますm(__)m